「ギターを手にした人のおよそ9割は、1年以内にギターをやめてしまう」
ギターメーカーとして世界的に有名なフェンダー社。そのCEOアンディ・ムーニー氏によれば、大規模なユーザー調査の結果、こうした事実が明らかになったといいます。
「その初心者のうちの90パーセントの人は、1年以内もしくは90日以内でギターを辞めてしまう」というのです。
Rolling Stone Japan 老舗ギターブランド「フェンダー」が成長し続けている理由 より引用
ギターとは、それだけハードルの高い楽器といえるのかもしれません。
では、ギターを手にした初心者が、挫折をせずに楽しくギターを続けていくにはどうしたらよいのでしょうか?
この記事では、「ギター初心者が挫折を回避するためのポイント」について解説します。
つまらない練習はやらなくていい
ギターを買ったばかりの初心者にありがちなのが、教則本などに載っている「練習エクササイズ」のようなものを、「つまらない」と思いながらも取り組んでしまうことです。
もちろん、その練習を「楽しい」と感じているなら何の問題もありません。ですが、やっていて「つまらない」と感じるなら、無理に続ける必要はないのです。
「ギターをある程度弾けるようになるためには、つまらない練習にも耐える必要がある」と思っている人もいるかもしれませんが、それは勘違いです。
軽音楽部などに所属してみるとよく分かりますが、ほとんどの人は「つまらない練習」などしていません。好きな曲をただコピーしているだけです。それでも皆、一般的なJ-POP、J-ROCKレベルの演奏なら、いずれこなせるようになります。
「そこそこギターが弾ける」のレベルまで到達するのに必要なのは、つまらない練習に耐えることではなく、単純に日々の継続(ギターを弾き続けること)なのです。その継続のためには、やはり「楽しいと思える練習」をやるべきです。
おすすめなのは、自分の好きな曲の譜面を用意するなどして、とにかく弾いてみることです。弾けそうな部分だけでも構いません。そういった練習をコツコツ続けるだけでも、ギターは弾けるようになります。
「憧れのギタリスト」を見つける
憧れのギタリストを見つけることも、挫折を遠ざけることに繋がります。
「自分もこんなふうになりたい!」と心から思えるような憧れのギタリストが見つかれば、日々の練習に対するモチベーションは飛躍的に向上します。
ここで重要なのは、好きなアーティストではなく、憧れの「ギタリスト」という点です。
誤解のないように言っておくと、バンドのボーカリストやシンガーが好きで、その人の曲を弾きたいと思うことは何も悪くありません。ただ、ギタリストに興味をもった場合は、ギターの演奏そのものに対する興味が一気に加速するので、そのほうが挫折を遠ざけることに繋がるわけです。
そんな「憧れのギタリスト」が見つかったなら、その人の曲をどんどんコピーしてみましょう。「難しくて弾けない!」と思ったら別の曲を弾いてみる、弾けそうな部分だけでも弾いてみる、というふうに、ハードルを下げながら取り組めばOKです。
誰かと一緒にやる
バンド(またはユニット)を組むなどして、誰かと一緒に音楽をやることも挫折を遠のけることに繋がります。
スタジオに行って皆で曲を演奏する快感は、ひとりでは決して味わうことができないものです。練習の合間に皆と先の予定を話し合ったり、帰りにコンビニに寄って何か飲み食いしながら談笑したり、演奏以外の時間もきっと楽しいものになるでしょう。
そんな充実した日々をギターと共に過ごしていれば、挫折などするはずないのです。実際に、ギターを長年続けている人の多くは、バンドを組んでいる(組んでいた)人だと思います。
とはいえ、見知らぬ他人といきなりバンドをやるなど、よほどの積極性の持ち主でもないかぎり難しいでしょう。比較的かんたんな手段としては、学生限定になりますが、「軽音楽部に入ってみる」というものがあります。
その際、「もっとうまくなってからじゃないと…」などとためらう人がいますが、そんなことを考えていると、いつまでも行動できずに終わってしまいがちです。何も弾けないとしても、勢いで入部してしまうぐらいでよいのです。先輩に教えてもらったり、初心者同士でバンドを組んだりして、それはそれで楽しいものだと思います。
発表の機会を作る
何かしらの発表の機会を作るのも、挫折を遠ざける手段のひとつです。
バンドをやっている人ならライブの予定を組んでみるとか、家でひとりで弾いている人ならYouTubeやインスタグラムなどに演奏動画をアップするとか、「誰かに見てもらう」という目標をたててみるとよいでしょう。
自分の演奏を他人に見てもらうのは、慣れないうちはとても勇気がいることだと思います。しかし、誰かが楽しんでくれたり褒めてくれたりすると、それは自分にとって大きな喜びとなるはずです。結果的に、ギターに対するモチベーションもグッと高まり、挫折の回避につながるわけです。
ただ、インターネット上に自分の演奏動画をアップする場合は、心ない人から中傷されてしまうリスクがあることを理解しておきましょう。強固なメンタルの持ち主ならあまり気にせず強気でいけると思いますが、そうでない人は鍵つきのアカウントにするなどして、友人にのみ見てもらうなどの工夫をするほうがよいかもしれません。
「弾けなくてつまらない」と感じるならやめたほうがよい
それなりに練習を続けているものの、なかなか弾けるようにならず、「弾けないからつまらない」と感じているなら、残念ですがギターに向いていないのかもしれません。
ギターはそこまで簡単な楽器ではありません。仮に何かが少し弾けるるようになっても、次は別の何かがうまく弾けずにつまずきます。好きな曲が1曲弾けるようになっても、次は別の曲が弾けずにつまずきます。
ギターという楽器はその繰り返しです。うまく弾けないという「過程の部分」を、まるでゲームを攻略するかのように楽しむことができなければ、続けるのは難しいでしょう。
つまり、「弾けないからつまらない」と感じている時点で、その人はあまりギターに向いていないのです。ギターに夢中な人は、その「“弾けない”の攻略」を楽しんでいるのですから。
かっこよくギターが弾ける、という「結果」の部分に興味を持つのと、ギターを弾くこと自体に興味を持つのはまったく別です。結果の部分だけに興味を持っている人は、「弾けなくてつまらない」という感覚に陥りやすいのだと思います。
もし、「つまらない」が頭をよぎるなら、ギターなど潔くやめてしまうほうがよいかもしれません。もっと夢中になれる「別の何か」に時間を使うほうが、人生は有意義になるはずです。
ギターを続けている人のほとんどは、がんばって続けているのではありません。楽しくて仕方ないから続けているのです。
高いギターを買っても挫折する可能性は大いにある
「高いギターを買えば挫折しにくい」などという人もいますが、それを鵜呑みにしてはいけません。
上で述べたことにも繋がりますが、「高いギターを買ったんだから練習しなきゃ…」などと思っている時点で、その人はギターを楽しめていないわけです。楽しめていないのに無理に続けたところで、よい結果にはならないでしょう。
そもそも、高いギターを買おうと何をしようと、挫折するときは挫折するのが人間です。冒頭でも述べたように、ギターを手にした人の9割は1年以内にやめてしまう、という事実があります。その事実を考えれば、はじめの段階で高いギターを買うなど、10%しか当たらないギャンブルに大金を投じているも同然で、リスクが大きすぎるのです。
たんまりとお金がある人なら、いきなり高いギターを買うのもアリでしょう。しかし、大半の人(家庭)は、そこまでの金銭的な余裕はないはずです。
「高いギターを買えば挫折しにくい」などという不確かな論拠を信用してはいけません。
おわりに
ギター初心者が挫折を回避するためのポイントについて解説しました。
結局のところ、挫折するかしないかは、ギターに対する情熱の度合いとその人の性格(積極性)によるところが大きいのだと思います。
残念ですが、挫折を回避する裏技のようなものはありません。9割挫折の壁は、これからも多くの人の前に立ちはだかるのでしょう。