弦を揺さぶり、ピッチを揺らす「ビブラート」。
説得力のあるギターソロを弾くには必須となるテクニックです。このビブラートを身につけることが脱初心者へのカギ、といっても過言ではないでしょう。
しかし、練習してもなかなか習得できないとか、中途半端なビブラートになってしまうなど、苦労している人も多いのではないでしょうか。
この記事では、しっかり揺らすビブラートのやり方・コツについて解説します。
はじめに
ギターのビブラートには、弦を押さえた左手を横に揺らす「横揺れのビブラート」と、弦を縦方向に揺さぶる「縦揺れのビブラート」があります。
ここでは、エレキギターで一般的に使われる「縦揺れのビブラート」について解説します。
基本的なビブラートのやり方
まずは、基本的なビブラートのやり方を確認しましょう。
ポイントは、人差し指の付け根あたりをネック下にしっかりとつけること。(つけないやり方は後述)

きっちりとしたビブラートをかけるには、支え(支点)が重要です。この人差し指の支えをキープしたまま(押し当てたまま)、「弦を下に引きずりおろす(または上へ持ち上げる)→ 元に戻す」と繰り返します。


このとき、指の屈伸(曲げ伸ばし)ではなく、手首から先の動き、手全体の動きで弦を動かします。(指の屈伸によるビブラートは後述)
実際の動きを動画でも確認してみましょう。3弦を下方向に、1弦を上方向に揺らしています。
どの指でビブラートを掛けるにしても、支点は人差し指の付け根です。人差し指の付け根を、ネック下に「しっかりと」当てています。
上と下、どちらに揺らせばいい…?
ビブラートを掛ける際、その弦を上方向か下方向のどちらに揺らすべきかを考えてみましょう。
1弦にビブラートを掛ける場合、下に揺らすと弦が指板から外れ落ちてしまいます。そのため、上に揺らす以外に選択肢はありません。
6弦の場合も同様で、上に揺らすと弦が指板から外れ落ちます。そのため、下に揺らす以外に選択肢はありません。
2~5弦に関しては、どちらに揺らしても問題はありません。各自の都合で決めればよいでしょう。
ビブラートを習得するために必要なこと
ビブラートのやり方が分かっても、いざやってみると全然うまくいかない、という人がほとんどではないでしょうか。
ここからは、「ビブラートを習得するために必要なこと」を説明します。
言葉の理解より「真似」が大事
ビブラートの際の手首周辺の筋肉運動を、言葉で正確に伝えるのは難しいものです。
いくつかの筋肉の動きが複雑に絡んでいるため、仮に言葉で正確に伝えられたとしても、それを理解して動きで再現するのは困難でしょう。
そのため、理屈先行で考えるのではなく、最低限のポイントを理解したら、あとはひたすら見て真似をしてください。
充分な「慣れ」がないとできない
ビブラートを操るには、充分な「慣れ」が必要となります。
ビブラートの際の手首周辺の動きは、日常生活ではあまり使わない類の動きです。それを突然「やれ!」と言われても、うまくできなくて当たり前なのです。
まずは、中途半端でも何でもよいので、「それっぽいもの」ができるように頑張ってみましょう。
おすすめなのが、「なんでもビブラートをかける」というやり方。
普段の練習で何かのフレーズを弾くときは、少しでも伸ばす音があるならビブラートをかけるようにしてください。うまくできなくても構いません。目的は「ビブラートの動きを習慣化すること」です。
そうやって、とにかく体に慣れさせるのです。これを毎日しつこく繰り返します。
そのうち、ぎこちなかったビブラートが、だんだんと自然なものに近づいていくと思います。
本当に「音」が揺れているかチェックする
ある程度ビブラートができるようになったと感じたら、今度はその「音の揺れ方」に注目してみましょう。
自分ではしっかりとビブラートを掛けているつもりでも、よくよく音を聞いてみると、「あれ…?たいして揺れていないかも…」なんてことはありませんか?
いくら左手を激しく動かしたところで、その動きが「弦」に伝わっていないなら意味がありません。まともなビブラートができているかどうかは、視覚ではなく「聴覚」で判断しましょう。
大きく速く揺らすビブラートをマスターするには?
一応、ビブラートができるようになったとしても、なんだか弱々しいビブラート、痙攣のようなビブラートにしかならない、という人は多いはずです。
まして、ザック・ワイルドやイングヴェイ・マルムスティーンのような、大きく速く揺らすビブラートとなると、まるで別物のような難しさを感じるでしょう。
ここからは、大きく速く揺らすビブラートをマスターするための秘訣のようなものについて解説します。
フォームが悪いとあまり揺れない
縦揺れのビブラートは、左手のフォームに問題があると大きく揺らすことができません。(微弱な揺れにしかならない)
たとえば、よくあるのが「指先が立っていない(指先がペタッと寝ている)フォーム」。

一応、このフォームでビブラートを掛けることもできますが、弦を大きく揺さぶることは困難です。特に人差し指のビブラートは、痙攣のような微弱なものにしかならないでしょう。
ザック・ワイルドやイングヴェイ・マルムスティーンのような激しいビブラートをマスターするには、指先をしっかりと起こしたフォームが必須となります。

回転するような動きは結果に過ぎない
先ほどの動画でビブラートの動きを観察してみると、人差し指を軸として、左手がクルクルと回転運動しているように見えたかもしれません。(特に人差し指によるビブラート)
それがゆえに、「回転させるようにするのがコツ」だという人もいます。ですが、個人的には「回転=コツ」という考え方はあまりおすすめしません。
回転しているように見えるのは、結果的にそうなっているだけです。ビブラートの目的は、弦を下や上にしっかりと動かすこと。回転するような動き自体を目的にすると、力が横方向に逃げてしまう可能性があります。すると、大きく速く揺らすビブラートが掛けづらくなるのです。
しっかりとしたビブラートを掛けるには、回転という意識を持たずに、単純に「下へ揺らす」「上へ揺らす」と考えたほうがうまくいくと思います。
人差し指の支えがないビブラート
さて、ここからは少し違ったタイプのビブラートも見ていきましょう。
これまで「人差し指の支えが大事」とさんざん述べてきました。
しかし、実は人差し指の付け根をネック下から離したフォームでも、縦揺れのビブラートは可能です。

やり方やコツに関してですが、あらためて伝えるべきことは特にありません。なぜなら、人差し指を支点にした基本的なビブラートが「本当に」できているなら、ほとんど同じ感覚で、すぐにできるからです。
強いて言うなら、人差し指の代わりに、ネック裏にそえた親指を支えとしている感じでしょうか。
一応、動画でも確認しておきましょう。
どんなときに使う…?
人差し指を支点とする基本的なビブラートは、あくまで「基本」です。弾くフレーズの内容によっては、人差し指の付け根をネック下に当てることが困難な場合もあります。
たとえば、大きく指を開いたストレッチフレーズの直後に、人差し指でビブラートを掛けたい場合などです。
そうした状況下でもビブラートを掛けられるよう、人差し指の支えがないビブラートも練習して慣れておくとよいでしょう。
その他のビブラート
ここまで解説したビブラートは、どれも「手首周辺の筋肉の動き」によるものですが、それとは別の動きでビブラートを掛けることもできます。
指の屈伸によるビブラート
たとえば、単純に指の曲げ伸ばし(屈伸運動)によってもビブラートは可能です。
指の屈伸によるビブラートは、左手のフォームに問題があったとしても可能なため、比較的簡単に感じる人が多いでしょう。人によっては、そこにアドバンテージ(優位性)を感じるかもしれません。
世界の名プレイヤーのなかには、指の屈伸によるビブラートを利用する人もいますが、どんなときでもこのビブラートを使う、という人はあまり見かけません。
大きく速いビブラートを安定して掛ける場合など、やはり基本のビブラートに軍配があがるでしょう。
腕ごと上下するビブラート
腕ごと上下に揺さぶるようにしてビブラートを掛ける方法もあります。
このビブラートは、エリック・クラプトンが得意とするスタイルです。クラプトンのスタイルにこだわりたい人は、練習してみるのもよいでしょう。
このビブラートを掛けるときは、親指をネックから完全に離してしまったほうがやりやすいはずです。
おわりに
しっかり揺らすビブラートのやり方・コツについて解説しました。
ビブラートを習得するには、きっと長い時間が掛かるでしょう。はじめのうちは指先が痛くなったりするかもしれませんが、根気よく練習を続けてみてください。