左手の指同士の間隔をグッと広げるようにして押弦する「ストレッチ」。
このストレッチがうまくできず、「自分は手が小さいから…」と結論づけてしまう人も多いかもしれません。
ですが、大抵の場合は本人の勘違いです。手が小さいから届かないのではなく、フォームが悪いから届かないだけなのです。
この記事では、ストレッチで指が届かない理由とその解決方法について解説します。
“本当に”指が届かないのかを確認する
まず、指が届かないと思っているストレッチフレーズがあるなら、「本当に届かないのかどうか」を確認してみましょう。
下の写真のように、イスに座った状態で、太ももの上にギターを立てるようにして乗せてみましょう。
この状態のままストレッチのフレーズを押さえてみて、指が届くかどうかを確認します。
もし、これで指が届くなら、それはあなたの手の大きさでも「届く」ということ。逆に、この状態でも届かないのであれば、それは「本当に届かない」ということになります。
おそらく、大抵のストレッチフレーズは、これで指が届くはずです。
ストレッチで指が届かない理由
では、普通にギターを構えた状態だと、なぜ指が届かなくなってしまうのでしょうか?その原因を考えてみましょう。
ストレッチで指が届かないと嘆いている人の多くは、下の写真のように、「指の付け根」の部分がネックの下側に潜り込んだフォームで弾こうとしているはずです。
写真では、3弦5フレット、8フレット、10フレットを押さえようとしていますが、小指がまったく届いていません。こうしたフォームでは、遠くを押さえることができないのです。(手が大きい人は例外)
一旦、ギターのことは忘れて、窓の外に手を伸ばす状況を想像してみてください。このとき、窓から少し身を乗り出すようにして腕を伸ばすのと、肘から先だけを窓から出すのとでは、どちらがより遠くに手を伸ばせるでしょうか?
もちろん、身を乗り出しているほうが遠くまで手を伸ばすことができるはずです。ギターのストレッチも、それと同じような理屈だと思ってください。
指の出発点となる「指の付け根」がネック下に潜っていては、指が遠くまで届かなくて当然なのです。
ストレッチに適したフォームとは…?
この「指が届きづらい状態」を解消するには、指の付け根を「もっと前」まで持っていく必要があります。
上の写真のように、指の付け根が前方に出ていれば、必然的に指は広げやすくなり、遠くを押さえるのもラクになります。
先ほどの写真とは違い、3弦5、8、10フレットをうまく押さえることができています。
写真を見てすぐに真似できる人はそれでOKですが、いまいちコツがつかめない人は、以下の2点を意識してみましょう。
- 手首を前方に突き出す
- 左肩を少し落とす
手首を前方に突き出す
まず、左手で弦を触れたまま、手首だけをグイッと前方に移動させるようにしてみましょう。ネック下に潜っていた指の付け根が、自然と前に出てくるはずです。
左肩を少し落とす
それから、体勢そのものを意識することも有効な手段のひとつです。左肩を地面に近づけるように体を少し傾けると、手首に余裕が生まれて、指の付け根を前方に持っていきやすくなるはずです。
姿勢に問題があるとストレッチはうまくいかない
このストレッチフォームは、演奏時の姿勢に問題があるとうまくいきません。
たとえば、ソファに寝そべるような姿勢で練習している場合、普通に座っているときよりもさらに指の付け根が潜り込んでしまうため、その状態から適切なフォームにするのは尚更困難となります。
ストレッチをうまくこなすには左手のフォームが重要ですが、左手のフォームは体全体の姿勢とも深く関わっている、ということを頭に入れておきましょう。
ストレッチがうまくいかないのは「右手」のせい…!?
ストレッチのコツが頭では理解できていても、それがどうしても実践できず、うまくいかないことがあります。その場合、もしかしたら「右手のピッキングフォームのせい」かもしれません。
「左手のフォームは姿勢と深く関連する」という話をしましたが、人の体はすべて繋がっているため、右手フォームとも深く関連することになるのです。
右手のピッキングフォームに正解のようなものはなく、個人の自由です。ただ、ピッキングのフォームによっては、どうしてもストレッチがやりづらくなってしまうことがあります。
たとえば、「右肘が下がり気味のフォーム」です。右肘がやや下がったフォームでは、必然的に右肩が下がり気味になります。すると、体は繋がっているため、左肩がやや上がることになります。左肩が上がると、それにともない左肘の位置も上がります。結果的に、左手首に余裕がなくなってしまうのです。
こうした「右肘が下がり気味のフォーム」は、ピックのアングルを平行気味に、かつボディに垂直にしようと意識している人にありがちです。このピッキングフォームが悪いわけではありませんが、「柔軟な左手のストレッチ」という視点で考えた場合、やや不利なのです。
手が大きい人やストレッチを多用しない人なら、あまり問題はないかもしれません。しかし、そうでない場合、イスにきちんと座ったうえで足台などを利用し、ギターの位置をできる限り高くするか、右手のフォーム自体を見直さなければなりません。
足台を使うのは比較的かんたんな解決方法ではありますが、「まともに弾くには足台が必須」というハンデのような状態が嫌な人もいるでしょう。また、人前で立って演奏するときは、胸のあたりまでギターの位置を上げなければならないはずです。そうした点が気になるなら、右手のフォームを修正するしかありません。
右手フォームの見直しについては、ここで触れると膨大な文章量になってしまうため割愛します。とりあえずは、「右手のせいでストレッチがうまくいかないこともある」ということだけ頭に入れておいてください。
指が届かなかった場合の対処法
先にも述べたように、本当に指が届かないというケースも時にはあるでしょう。
たとえば、ポール・ギルバートやスティーブ・ヴァイのような、手の大きな海外ギタリストが「本気」で指を広げたワイドストレッチのフレーズは、よほど手が大きい人でなければ真似できないでしょう。
そんな場合は、別の方法で同じようなフレーズを弾くことができないかを考えてみましょう。
- ポジションを変更して弾いてみる
- ストレッチではなく縦移動(弦移動)で弾けないか考えてみる
- スライドやタッピングなどを使って弾けないか考えてみる
うまくやれば、ニュアンスは違っても、音符の並び的には同じフレーズを弾くことができたりもします。それさえも無理な場合は、似たような雰囲気さえ演出できればOKと考えて、少し違うフレーズに変えてしまうなどしてもよいでしょう。
憧れのギタリストと同じように弾きたくても、身体的な差でそれが叶わず、落ち込んでしまうこともあるかもしれません。ですが、別の方法で同じようなフレーズを弾けないか、と工夫してみるのもギターの楽しみ方のひとつ。そう前向きに捉えてみましょう。
おわりに
ストレッチで指が届かない理由とその解決方法について解説しました。
無理をして手首を痛めたりしないよう気をつけながら、練習に励んでみてください。