大抵のスタジオ、またはライブハウスに置いてあるであろう、「Marshall(マーシャル)」のギターアンプ。
多くのプロギタリストが称賛の声をあげる一方で、マーシャルが「苦手」「好きではない」という人を見かけることもあります。
もちろん、いくら人気のアンプとはいえ、自分の好みに合わないことはあるでしょう。
ただ、マーシャルを「苦手」とか「好きではない」と感じるのは、好みどうこうの問題ではなく、弾き方に問題があるせいかもしれません。
この記事では、「マーシャルアンプが苦手」と感じている人が抱える「技術的な問題」について解説します。
そもそも本当にマーシャルの音が苦手なのか?
そもそもの話ですが、マーシャルを敬遠する人は本当に「マーシャルの音」が苦手なのでしょうか?
まずはその点をきちっと確認するべきです。確認の仕方はいたってシンプル。「他人の奏でるマーシャルサウンド」をチェックすればよいのです。
ここでいう他人とは、身近にいる友人のことではありません。普段からマーシャルアンプを使用している、プロのギタリストのことです。
たとえば、イングヴェイ・マルムスティーンやザック・ワイルド。彼らはレコーディングでもステージ上でも、基本的にはマーシャルアンプを使用しているはずです。
彼らのような「マーシャル使い」の奏でるサウンドを聞いて、「あぁ、苦手な音だな…」と感じるなら、それは本当にマーシャルの音が好きではないのでしょう。
ですが、他人のマーシャルサウンドを聞いても特に苦手と感じないなら、きっとそれが「答え」です。
要は、マーシャルの音が苦手なのではなく、「“自分”の奏でるマーシャルサウンド」が苦手なだけなのです。
問題はセッティングではない

では、なぜ自分の奏でるマーシャルサウンドがいまいちな音になってしまうのでしょう?
「セッティングのせいかも…」と考える人が多いかもしれませんが、それはおそらく間違いです。
なぜなら、マーシャルのEQのつまみ(イコライザー)はすべて10、ほかにエフェクターは使わない、といった「小細工なし」のセッティングで良い音を奏でるギタリストだっているからです。
そんなギタリストがいる以上、「セッティングのせい」という言い訳は通らないはずです。
つまり、自分自身の弾き方に問題があるから微妙な音になってしまう、と考えるのがいちばん筋が通っているわけです。
悪いのはマーシャルではなく「自分」
マーシャルが苦手だという人に、具体的に何が嫌なのかを問えば、おそらく以下のような点を挙げるでしょう。
- 高域(ハイ)がキツすぎる
- 粗が目立って下手に聞こえる
これらの問題について、少し詳しく見ていきましょう。
高域(ハイ)がキツすぎると感じる理由
まず、「高域がキツすぎる」と感じる問題について。
これは、高域ばかりが目立ってしまう「あまりよくないピッキング」をしている可能性が高いです。
弦を効率よく振動させるためには、上から下(または下から上)に向かって弦を「はじく」必要があります。ピックの縁の部分を弦に当て、そのまま横に向かって「こする」ような動きでピッキングをしてしまうと、しっかりとした弦振動が得られません。
それでも一応、音は出ますが、音量・音圧の乏しい「弱々しい音」になってしまうはずです。そんな音をマーシャルアンプに通した場合、バランスの悪い音(高域ばかりが目立つ状態)になってしまうのです。
それを深く歪ませた場合は尚更で、痛々しく、線の細い、抜けの悪いサウンドになるでしょう。
粗が目立つのはただの「事実」
続いて、「粗が目立って下手に聞こえる」という問題です。
これに関しては単純な話で、「それこそが本当の自分である」と認識すべきです。
「マーシャルは下手に聞こえるから…」という人も、別のアンプを使えばご機嫌な演奏ができるのかもしれません。ただそれは、自分のプレイの乱雑さから目を背けているにすぎません。
別のアンプで「丸い音」にセッティングした結果、自分の問題点を自分で聞き取れなくなった、ただそれだけのことなのです。
耳の肥えた人にはそのごまかしも通用しません。本当はあまり上手くないということが、すぐにバレてしまうでしょう。
マーシャルアンプを使って華麗な演奏を聞かせてくれるギタリストが山ほどいる、その事実を忘れてはいけません。
あえてマーシャルアンプで練習してみる

マーシャルアンプが本当に好みではなかったとして、もちろんそれは何の問題もありません。
ただし、自分自身に問題(ピッキングやプレイの粗さ)があるがゆえにマーシャルを毛嫌いしているのであれば、その問題としっかり向き合ったほうがよいはずです。
問題と向き合うにはもちろん、マーシャルアンプを使って練習するのがいちばんです。
スタジオなどに行って実機のマーシャルアンプを使用できればよいですが、なかなかその機会がない場合などは、マーシャルの音を模した「アンプシミュレータ」を使用するのもアリでしょう。
この際に大事なのは、エフェクターなどを使って「丸い音」にしないことです。個人的におすすめのセッティングは以下のとおり。
- アンプのEQはすべて10
- ゲインは2~3程度、あまり歪ませない(弱く弾けばクリーンに聞こえる程度)
- その他エフェクターは使わない
- ピックアップはリアを使う
このセッティングで自分の演奏をチェックしてみましょう。いっさいのごまかしがきかないので、自分の実力がはっきりと分かるはずです。
もちろんこのセッティングは、自分の問題点から目を背けずに向き合うためのものです。いつもこの音で練習をすべきとか、本番でもこのセッティングにしろ、という意味ではないので、誤解のないよう注意してください。
おわりに
サウンドに関する好みは人それぞれです。マーシャル以外のアンプを使用することは、もちろん悪いことではありません。
ただ、マーシャルだと良い音を鳴らせないとか、下手に聞こえてしまうという人は、この記事をヒントにしつつ、一度しっかりと自分の演奏と向き合ってみてはいかがでしょう…?