ギターの練習はクリーントーンでやるべき…?【そうとも言えない】

ギター

「歪ませてごまかす」

この言葉、ギタリストならば一度は耳にしたことがあるでしょう。

こうした「歪み=ごまかし」といった考え方があるせいか、「練習では歪ませすぎないように!」とか「練習はクリーントーンでやるべき!」といった意見もたびたび見受けられます。

ですが、歪ませて練習するのが悪いことである、と考えてしまうのは少し短絡的です。

エレキギターを練習するときは、目的によってサウンドも変えるべきなのです。

この記事では、「普段の練習時にどんなサウンドにすべきか」について解説します。

クリーントーンでの練習がよいとは限らない

クリーントーンで練習することにそれなりのメリットがあるのは、皆さんもなんとなく分かっているでしょう。

クリーンでの演奏は少しのごまかしも利かないため、自分の問題点と向き合うには良い手段となるのです。

ただし、普段の演奏ジャンルが「歪ませた音」を基本とするものならば、その歪ませた音でもしっかりと練習しておくべきです。

なぜなら、エレキギターの場合、歪ませないと分からないことがあるからです。

歪ませないと分からないこととは…?

「歪ませないと分からないこと」は、大きく分けて2つ存在します。

  • ノイズ(不要な音)の有無
  • 出音のニュアンス

それぞれ詳しく見ていきましょう。

ノイズ(不要な音)の有無

エレキギターを弾く際は、当然ながら、弦をはじいて音を出すことが重要です。しかし、不要な音を鳴らさないようにすること(ミュート)も同じくらい重要です。

ミュートがおろそかだと、和音の響きは濁り、単音のフレーズも不明瞭になります。その結果、聞き苦しい演奏となってしまうわけです。

その「ミュート」がしっかりとできているかを確認するには、クリーントーンよりも歪んだ音のほうが適しているのです。

クリーントーンの場合、ミュートが中途半端で雑音が鳴ってしまったとしても、軽く雑音が鳴ってしまった程度なら、そこまで悪目立ちもしないでしょう。

しかし、歪んだ音の場合はそうはいきません。

特に、ハイゲイン寄りのサウンドだと、わずかな雑音でも大きな音として聞こえてしまいます。そのため、きちんとミュートができていなければ、とてもノイジーな演奏になってしまうのです。

ミュートがきちんとできているかを確認するには、ある程度しっかりと歪ませた状態のほうがチェックしやすいはずです。

出音のニュアンス

エレキギターは、ピッキングの際の右手のタッチによって出音のニュアンスが変化します。

この「ニュアンス」も演奏の印象を決定づける大事な要素のひとつであり、無視してはならないものです。

そして、歪ませたサウンドでのニュアンスは、歪ませた状態でなければ分からないのです。

特に顕著なのが「ピッキングハーモニクス」や「ブリッジミュート」のようなプレイです。クリーントーンでこれらを含むフレーズを弾いても、実際に歪んでいたらどんな音になるのか、よく分からないはずです。

最終的に歪んだ音で演奏をするのであれば、出音のニュアンスを確認するためにも、普段から歪んだ音で練習をしておくべきでしょう。

クリーントーンでの練習も必要

ここまで、歪ませた音で練習することのメリットについて述べてきました。しかし、クリーントーンで練習することを否定しているわけではありません。

むしろ、よほどの上級者以外、クリーントーンでの練習も積極的に取り入れるべきだと思っています。特に、普段からハイゲインサウンドで演奏している人は尚更、クリーンでの練習をするべきです。

なぜなら、深く歪ませるほど、自分の演奏の粗さを見逃しやすくなるからです。

耳が鋭い人ならば、深く歪んだサウンドでも自分の演奏の粗さに気づくことができるでしょう。しかし、そこまで耳が鋭くない人の場合、深い歪みが邪魔をして、自分の演奏の粗さに気づくことができないはずです。

結果的に、いつまでも自分の演奏の問題点に気づけず、「自分はそこそこ弾けている」という勘違いに陥りがちなのです。

自分の耳で自分の演奏の粗さに気づくことができなければ、ギターは一向に上達しません。自分は本当にしっかりと弾けているのか、クリーンでの練習を通して定期的に確認したほうがよいのです。

完全なクリーントーンだとあまりにも気乗りしない場合、ごくこく軽い歪みのクランチサウンド(クリーンに近いクランチ)でもよいと思います。

とにかく、ハイゲインなサウンドで自分自身を騙さないようにすることが重要です。

速弾きをする人にありがちですが、クリーン(またはクリーン寄りのクランチ)でしっかりと音が出ない(スカスカの音になってしまう)なら、きちんと弾けていない証拠です。その状態で深く歪ませても、抜けの悪い音になるだけです。

生音で練習するのはアリ…?

生音(アンプに繋がない状態)で練習するより、アンプなどで出音を確認するほうが中身の濃い練習になるのは言うまでもありません。

とはいえ、ほんの数分だけ練習したいときなど、わざわざアンプに繋いだりするのを面倒だと感じる人は多いでしょう。

接続を面倒くさがって練習しないよりは、生音でもこまめに練習したほうが上達は早いと思います。

「ワイヤレスシールド」があれば、自宅での音出し練習がとてもラクになります。1万円程度でもそれなりのものが買えるので、面倒くさがり屋のギタリストにはオススメです。

おわりに

「普段の練習時にどんなサウンドにすべきか」について解説しました。

好きな音でいつまでも弾いていたい気持ちは分かりますが、うまくなりたいと思うなら、目的に応じて練習時の音も切り替えるほうがよいでしょう。

いつも深く歪ませて弾いている人は、覚悟を決めてクリーン寄りの音でも練習してみては…?