苦労してビブラートができるようになっても、なんだか痙攣しているだけのような、中途半端なビブラートになってしまい、そこから抜け出せない人は多いでしょう。
いまひとつなビブラートになってしまうのには理由があります。そこに気づかなければ、いつまでたっても中途半端なビブラートしかできません。
この記事では、ビブラートが中途半端になってしまう理由と、ワンランク上のビブラートを習得するための秘訣について解説します。
ビブラートはフォームが悪いとあまり揺れない
ビブラートの揺れが痙攣のように中途半端になってしまう理由のひとつは、「フォームが悪い」です。
ビブラートは、左手のフォームに問題があるとうまくいきません。フォームに問題がある場合、いくらがんばっても「微弱な揺れ」程度にしかならず、ザック・ワイルドやイングヴェイ・マルムスティーンのような、大きく速く揺らすビブラートはできないのです。
では、「フォームが悪い」とは具体的にどんな状態を指すのかを詳しく見ていきましょう。
よくあるのが、下の写真のような「指が寝そべっているフォーム」です。
やや極端ですが、指板に対して指がペタンと寝そべっています。
こうしたフォームでも、ビブラートをかけること自体は可能です。しかし、このまま大きく速く揺らそうと試みたところで、指が寝そべっている都合上、「揺らそうとする力」が弦にうまく伝わらず、しっかりとは揺らせないわけです。
揺らそうとする力を弦にしっかり伝えるためには、下の写真のように、ある程度指を起こしたフォームが必要です。
こうしたフォームでうまくビブラートができている場合、指先に弦が引っかかってくれるような、ある種の安心感、安定感のようなものを感じるはずです。その感覚があるからこそ、激しく弦を揺らせるわけです。
痙攣のような中途半端なビブラートしかかけられない人の多くは、先の写真ほどではないにしろ、指が寝そべり気味のフォームになっていると思います。自分のフォームをよくチェックしてみてください。
よくないやり方に陥っている可能性も
左手のフォームにはさほど問題がなくても、ビブラートのやり方そのものに問題がある場合、大胆なビブラートはかけられません。
あまりよくないやり方に陥ってしまう原因のひとつとして考えられるのが、「的確とは言えない表現を真に受けている」というパターンです。
たとえば、ビブラートのやり方やコツの説明として、「回すような動きで…」という表現をよく見かけます。
たしかに、人差し指を軸として手が回転しているように見えるので、そう表現したくなるのも頷けます。ただし、これは正確な表現とは言えないのです。
ビブラートの動きをできるだけ正確に言葉にすると、「手首(腕)をひねるような回転運動」と、「手首の曲げ伸ばし(屈曲・伸展)の動き」が混ざったもの、です。「回すような動きで…」という表現は、大ハズレではないものの、正確でもないのです。
その「正確ではない言葉」をそのまま正直に受け取ってしまうと、うまくいかない可能性がある、というわけです。
もう少し具体的に説明しておきましょう。ビブラートは、弦を上または下に揺らす必要があります。「回すような動きで…」と意識した結果、力が横方向に逃げてしまい、上下に大きく揺らせなくなることもあり得るのです。
「回す」という表現に頭が支配されてしまい、そのせいでうまくいかない人は意外と多いかもしれません。当てはまると感じた人は、「回すような…」という意識を捨てて、単純に「上または下に揺らす」という意識に切り替えてみてください。
ビブラートのときだけフォームを意識するのはNG
ビブラートをマスターするにはフォームが重要ですが、ビブラートをかけるときだけフォームを意識するのは、あまりよくありません。
実際の演奏のなかでは、ビブラートをかける瞬間、または直前にフォームを気にしても、「もう遅い」ということがよくあります。
わかりやすい例をひとつ挙げておきましょう。
上の動画では、やや速めのフレーズの最後にビブラートをかけています。このような場合、ビブラートの直前でフォームを整えようとしても、その隙がないのでうまくいかないのです。
あまり速くないフレーズでも、フォームを整える隙がないことはよくあります。
つまり、リードのフレーズを弾くときは、いつでもビブラートがかけられるよう、常にフォームを意識し、整えておく必要があるのです。
フレーズによってビブラートがうまくかからない、かかりづらいという人は、こうした点に注目してみてください。
「あまりうまくない人」をお手本にしてはいけない
ビブラートは、あまりうまくない人をお手本にしてしまうとなかなか上達しません。実は、プロギタリストのなかにもビブラートが上手ではない人はたくさんいるのです。
メディアによく出る人気歌手の全員が、華麗なビブラートをかけられるわけではありません。皆さんもテレビの音楽番組などを通して、ビブラートができない、あるいはビブラートが不完全な歌手をたくさん見てきたことでしょう。
ギターに関しても、それと同じようなものです。プロの人が皆、上手にビブラートをあやつれるわけではありません。「人気がある」と「ギターがうまい」はまったく別の話です。人気バンドのギタリストに憧れることは何の問題もありませんが、その人があまりうまくないなら、ビブラートなどの技術的な点においては別の人をお手本にしたほうがよいでしょう。
おわりに
ビブラートが中途半端になってしまう理由と、ワンランク上のビブラートを習得するための秘訣について解説しました。
中途半端なビブラートに比べて、きちんとしたビブラートは技術的にとても難しく、一筋縄ではいかないでしょう。ですが、身につけることで表現力は格段にアップするはずです。ぜひとも、がんばって練習してみてください。