エレキギターを手にした初心者が、次に興味を示すものといえば、おそらく「エフェクター」でしょう。
エフェクターには、大きく分けて「コンパクトエフェクター」と「マルチエフェクター」の2種類があります。そのため、どちらを買うべきか悩んでしまう人もいるかもしれません。
この記事では、そんな初心者に向けて、「コンパクトまたはマルチのどちらを買うべきか」について解説します。
プロでも「人それぞれ」
最初に結論を言ってしまうと、どちらがよいかは人によります。自分の理想、置かれている状況、環境、といった条件次第で答えは変わってくるのです。
たとえばプロのギタリストでも、コンパクトエフェクター派の人、マルチエフェクター派の人、環境によってコンパクトとマルチを使い分ける人、両方を組み合わせて使う人など、人によってさまざまです。
そこを踏まえたうえで、自分にとってのベストな選択を考えていきましょう。
コンパクトとマルチ、それぞれのメリット・デメリット
まず、コンパクトエフェクターとマルチエフェクター、それぞれのメリット・デメリットについて確認しておきましょう。
マルチエフェクターのメリット
- 1台でさまざまな音が出せる
- セッティングを保存できる
- どんな音色切り替えも一度スイッチを踏むだけ
- 配線がシンプルになる
- 宅録やヘッドホンでの練習にも使える
1台でさまざまな音が出せる
マルチエフェクター最大のメリットは、1台でさまざまな音が出せる点でしょう。たくさんのエフェクトが内蔵されているため、大抵のことはこなせるはずです。
また、使っているうちに音作り全般に対する知識を身につけることができるのも、ひとつのメリットといえそうです。
セッティングを保存できる
いくつものセッティングを保存しておくことができるのも、マルチエフェクターの大きな強みです。それらのセッティングは瞬時に呼び出すことができるため、複数のバンドを掛け持ちする場合や、幅広い楽曲を演奏する場合などで特に役立つでしょう。
どんな音色切り替えも一度スイッチを踏むだけ
マルチエフェクターは、一度フットスイッチを踏むだけで、予めセットしておいた「まったく別のサウンド」へと瞬時に切り替えることが可能です。
たとえば、深く歪んだディストーションサウンドから、コーラスとリバーブのかかったクリーントーンへと一瞬で切り替える、といったことが簡単に実現できます。結果的に、足もとへの意識を最小限に抑えて演奏に集中することができます。
配線がシンプルになる
配線がシンプルになる(繋ぐものが少なくなる)のもマルチエフェクターのメリットといえるでしょう。音が出ないなどのトラブルの際、シンプルな配線なら原因を追求しやすくなります。
宅録やヘッドホン練習にも使える
マルチエフェクターの多くは、PCに繋いでレコーディングをするための「オーディオインターフェイス機能」を備えています。レコーディングに必要な「DAWソフトウェア」が付属していることもあるため、その場合にはPCさえあればすぐにでも自宅録音が可能になります。
また、大抵のマルチエフェクターにはヘッドホン端子があるので、自宅にアンプがない場合や、近所迷惑が気になる環境下でも、本格的なサウンドで練習が可能です。
マルチエフェクターのデメリット
- コンパクトほどの自由度はない
- 操作がやや複雑
- 本体サイズが大きく重い(中~上位機種)
- 数年たつと廃れてしまう
コンパクトほどの自由度はない
マルチエフェクターにはたくさんのエフェクトが詰まっているものの、基本的にはその中での組み合わせで音を作ることになります。また、同時に使用できるエフェクト数が制限されていることも多く、コンパクトエフェクターを中心としたシステムに比べると自由度は低くなります。
操作がやや複雑
マルチエフェクターの場合、音の調整をするためには「ボタンを押す」「画面をタッチする」などの操作が何度も必要になります。そのため、コンパクトエフェクターに比べると、音の調整にどうしても時間がかかります。リハーサル時など環境にあわせて素早く音色を調整したい状況下では、コンパクトエフェクターのほうに分があると言えそうです。
本体サイズが大きく重い(中~上位機種)
マルチエフェクターのなかでも中~上位機種にあたるものは、それなりの大きさや重さになってしまうことが多く、持ち運びには少し苦労するかもしれません。
数年たつと廃れてしまう
マルチエフェクターのような「デジタル系の機材」は、数年もたてば「過去のもの」になってしまう点に注意しましょう。最新のスマートフォンを買っても、より優れたものがどんどん発売され、気づけばすっかり古い機種に…、という感覚と似ているかもしれません。
コンパクトエフェクターのメリット
- 自由度が高い
- 操作がシンプル
- 1~2台なら持ち運びがラク
- 長い年月を経ても廃れにくい
自由度が高い
コンパクトエフェクターの大きなメリットは、徹底的にこだわったシステムを構築できる点にあります。自分の好きなエフェクターを好きなように並べて、自分だけのサウンドシステムをどこまでも追求することができるのは、コンパクトエフェクターならではの醍醐味です。
操作がシンプル
コンパクトエフェクターの多くは、いくつかのツマミを回すだけのシンプルな操作性で、音作りや調整を素早くこなせる点が強みです。ライブ前のリハーサルなど、限られた時間で音を調整したい場合でも、比較的スムーズに対処できるはずです。
1~2台なら持ち運びがラク
コンパクトエフェクターは、その「コンパクト」という名のとおり、1~2台であれば気軽に持ち運びができる点も魅力です。ギターを入れたソフトケースのポケット部分に入れてしまえば、少ない荷物で出かけることができます。
長い年月を経ても廃れにくい
コンパクトエフェクターの多くは、長い年月を経ても廃れにくいという特徴もあります。たとえば、BOSS(ボス)の「SD-1」は、発売から40年以上もたちますが、いまだにベストセラーとして売れ続けています。
コンパクトエフェクターのデメリット
- 持ち運びに苦労する(数が多い場合)
- 配線が複雑になる(数が多い場合)
- 電源の管理が大変(数が多い場合)
- 複数エフェクトを同時にON・OFFするのが困難
持ち運びに苦労する(数が多い場合)
1~2台なら気軽に持ち運べるコンパクトエフェクターも、使う数が増えると気軽には持ち運べなくなります。エフェクターボードに各エフェクターを固定して、セットごと持ち運ぶことになりますが、電車移動がメインの人などは少し苦労するかもしれません。
配線が複雑になる(数が多い場合)
コンパクトエフェクターを複数台使う場合、当然そのエフェクター同士を繋ぐ必要があり、数が増えるほど配線は複雑になります。必然的に多くの機材やケーブルを使うことになるため、音が出ないなどのトラブルの際、その原因を突き止めるのに時間がかかってしまう可能性があります。
電源の管理が大変(数が多い場合)
コンパクトエフェクターを複数台使うなら、電源に関しても気を使わなければなりません。電池を使う場合、台数分の電池を用意するのは当然として、大事な本番中に電池切れなどしないよう注意する必要があります。
ACアダプターを使用することもできますが、重いアダプターを台数分持ち運ぶのは大変です。また、ステージ上などでは台数分のコンセントを確保できるか、という問題もあります。
複数エフェクトを同時にON・OFFするのが困難
コンパクトエフェクターの場合、演奏中に複数のエフェクターを同時にオンまたはオフにすることが困難です。たとえば、歪み系エフェクターをオフにし、代わりにコーラスをオンにしたい場合、2台のエフェクターを順番に踏んでいくことになるので、マルチエフェクターのように一瞬で音を切り替えることはできません。
自分の環境に合わせてコンパクトかマルチかを選ぼう!
コンパクトエフェクターとマルチエフェクター、それぞれのメリット・デメリットを理解したなら、あとはどちらが自分に適しているかを考えるだけです。
それでもまだ決めかねてしまう人に向けて、もう少しアドバイスをしておきましょう。
「とりあえずエフェクターがほしい!」という人は…
「考えてはみたものの、どちらがよいか分からない!でも、エフェクターはほしい!」
そんな人には、エントリークラスのマルチエフェクターがおすすめです。エントリークラスのマルチエフェクターは比較的小型のものが多く、持ち運びにもさほど苦労しません。1台あればあらゆるサウンドを作ることが可能なので、どんな音楽にも対応できるでしょう。
内蔵されているエフェクトをあれこれと試すうちに、音作りにも詳しくなっていくはずです。
軽音楽部・軽音楽サークルなどに所属して音楽をやりたい人は…
軽音楽部や軽音楽サークルに所属して音楽をやろうと思っている人には、マルチエフェクターがおすすめです。
部活やサークルで音楽をやる場合、「○○のコピーバンドを一緒にやろうよ!」などと誘われることが多くなりますが、マルチエフェクターを1台持っていれば、どんな誘いにも対応できるはずです。
また、その手の環境で音楽をやる場合、複数のバンドを掛け持ちすることになりがちですが、マルチエフェクターなら全バンドのセッティングを保存しておけるので便利です。
満員電車での移動が避けられそうにない人は…
満員電車に乗って移動せざるを得ない人には、コンパクトエフェクター(1~2台)、または小さめのマルチエフェクターなど、ギターの入ったソフトケースにそのまま収納できるものがおすすめです。
満員電車の場合、ギターを持って電車に乗るだけでもかなり大変です。ほかに持ち物がなければ、そのギターを守るように、抱きかかえるようにして立っていればよいですが、エフェクターケースまで持っていた場合、常に両手の自由がきかないので、とても苦しいことになります。周囲にも迷惑がられてしまうので、移動時間はかなりの苦痛となるでしょう。
混雑した電車での移動がメインになりそうな人は、ギターの入ったソフトケースに収まりそうなエフェクターを検討することをおすすめします。
マルチエフェクターのフットペダルはついていたほうがいい?
マルチエフェクターには、右端のあたりにフットペダルがついているタイプと、そうでないタイプとがあります。
フットペダルがついているタイプは、「ペダルを利用した独自のエフェクトが使用できる」と思えばよいでしょう。
たとえば、ペダルをペコペコと動かすたびに音の周波数が変化する「ワウ」が使えたり、ペダルの踏み込み加減でボリュームを変化させたり、といった使い方が可能になります。
ペダル付きがよいかどうかは、やはり「その人次第」です。ペダル付きならできることが少し増えますが、本体サイズが大きくなり、重量も増えることを忘れてはいけません。
どちらがよいかは各自が置かれている状況や環境で判断しましょう。
おわりに
コンパクトエフェクターとマルチエフェクターのどちらを買うべきか、について解説しました。
コンパクトとマルチ、どちらにもメリットとデメリットがあります。たまに、「○○のほうが絶対にいいよ!」などと言う人もいますが、各自の理想や環境が異なることを考えると、どちらがよいなどとは決して言いきれません。
自分の場合はどちらがよさそうか、自分自身で冷静に判断しましょう。ちなみに、コンパクトとマルチのどちらでも「よい音」を出すことは可能ですよ。