錆びない弦(錆びにくい…?)でおなじみの「ELIXIR(エリクサー)」。
多くの人が「錆びない」とはいうものの…
- 具体的にどれだけの時間弾いたのか
- どの程度までを錆びないと言っているのか
- 夏の話なのか、冬の話なのか
- 汗をかきやすい人かどうか
…など、あらゆる点が曖昧なため、信用するには決め手に欠けます。人によっては「長持ちするけど錆びる」と言っていたり、いったい何が本当なのでしょうか?
そこで今回、このモヤッとした疑問を解消すべく、こんな検証をしてみました。
約1年間、エリクサー弦を張ったまま交換せず、ひたすら弾き倒す(演奏時間にして数百時間)
その結果として分かったことを、以下に記していこうと思います。
使用したエリクサー弦の種類と検証期間
今回の検証で使った弦は、エリクサーの「OPTIWEB」。3種類あるエレキギター用の弦のなかで最も後発の弦で、ノンコーティング弦に近い音色や手触りが特徴とされています。
エリクサー弦は一般的な弦とは違い、弦が錆びにくいよう加工がされています。4~6弦の巻き弦は、まわりをコーティングする(薄い膜で覆う)ことで弦の酸化を防ぐ仕組みです。一方、1~3弦のプレーン弦は、コーティングはされていませんが、代わりに「アンチラスト」という特殊な加工を施すことで、サビの発生を抑える仕組みとなっています。
この「OPTIWEB」を約1年間、正確には11か月ほど交換せずに使い続けました。(2020年9月上旬~2021年の8月上旬まで)
演奏時間に関しては正確に把握していない(できない)のですが、少なくとも最初の2~3か月の時点で100時間を超えているのは確認済みです。
その後、あまり弾かなかった時期と、それなりに弾いていた時期が入り乱れたので何とも言えませんが、少なく見積もっても200時間は超えていると思います。
1年使ってもエリクサーは死なない
さて、1年弾き倒した感想は…
「1年使っても割とイケるじゃん…」でした。
まず弦の見た目に関して、錆びているという印象はまったくと言ってよいほどありません。



写真では分かりづらいですが、最終フレットまでピカピカの状態、と言ってよいでしょう。
プレーン弦は「まるで新品」
ここで、プレーン弦に注目してみましょう。

普段から手汗をたくさんかく僕は、一般的な弦を使った場合、下手をすれば1~2日弾きこんだだけでもプレーン弦がうっすら黒ずんでしまうのですが、エリクサー弦は1年弾いても光り輝く見た目を保っています。
コーティングの代わりに施された「アンチラスト」という技術の凄さがよく分かります。
巻き弦のコーティングは「少し剥がれる」
続いて、コーティングされた巻き弦についてです。
コーティング弦は弾きこんでいるうちにコーティングが剥がれ、見すぼらしく毛羽立つ感じになる、とよく言われますが、この「OPTIWEB」に関してはそこまで気にならない、というのが個人的な感想です。(NANOWEBに関しては後述)

ただ、ピックが当たる付近をよく見ると、やや薄黒い点のようなものが確認できます。たび重なるピッキングによってコーティングが少し剥がれ、そこだけ錆が発生しているのだと思います。
(とはいえ、写真を撮るまでは気になりませんでした)
音の劣化も「分からない程度」
では、肝心な「音」についても見ていきましょう。
見た目があまり錆びていないことから察しがつくと思いますが、元気でツヤのある音がいまだに継続している印象を受けます。
実際に映像で確認してみましょう。
多くの人が、まるで新品の弦のような鮮やかさを感じたのではないでしょうか?ちなみに、アンプなどに繋がない生音の状態でも、1年使ったとは思えない鮮やかな音が鳴ってくれます。
とはいえ、ずっと張りっぱなしがゆえに僕の感覚が麻痺し、音の劣化に気づいていない可能性もあります。そこで、一度新品のエリクサー弦に張り替えて、その「張りたてホヤホヤの音」も録ってみることにしました。
下が張り替えた直後の演奏動画です。
どうでしょう…?個人的にはさほど違いを感じません。生音では少しだけ巻き弦が元気になったような気がしましたが、一般的な弦を張り替えたときのような、「お~!音が蘇った!」というほどの変化はありません。いざ録音しても、あまり変わらない気がしました。
それならもう、数年に一度の弦交換でもよいのではないか、と思った人もいるかもしれませんが、それは厳しいはず。実際には、いくつかの問題が生じるのです。
使い続けると「摩擦」で錆びる
エリクサー弦を使い続けても、目立った錆など発生しないのは前述したとおりです。しかし、少し地味な点に注目すると、実はサビが発生しているのです。
地味な点とは、ずばり「弦の裏側」です。
演奏時にチョーキングや縦揺れのビブラートをすると、弦はフレットに擦りつけられることになります。これを日夜繰り返していると、弦とフレットとの摩擦により、コーティングやアンチラストといった加工が徐々に摩耗することになるのです。
その「摩耗」が進行すると、いずれは「普通の弦」が顔を出すことになります。そうなると、その部分に関しては、時間の経過とともにサビが発生してしまうのです。


ただ、これはフレットに接するわずか「~1ミリ程度」の話です。弦を張ったままの状態なら、見た目では何も分からないでしょう。音の面でも特に影響はないように感じます。
では、何が問題なのかというと…
「感触」です。
演奏中の“不快”な感触
たとえば、「3弦9フレットで激しくビブラートをかける」といった練習を、連日ひたすら続けるとしましょう。すると、前述したようにフレットとの摩擦ですり減った3弦の裏側(特に9フレット部分)に関しては、次第にサビが発生します。
その結果、3弦9フレットでビブラートをかけると、「キシキシ」「ザラザラ」といった不快な感触が手に伝わってくるのです。アンプなどを通さず生音で演奏すると、「キコキコ…」といった、とても嫌な摩擦音が聞こえます。
この感触、および摩擦音に耐えながらギターを弾くのは、僕にとってかなり苦痛でした。
僕の場合、弦を張って2か月ほど、時間にして100時間しないうちに、いくつかのポジションでこの現象が発生していたと思います。つまり、僕の場合は「2か月前後(~100時間程度)」がエリクサー弦の寿命(交換の目安)となるわけです。(検証のために張り続けましたが)
ただ、この目安はあくまで僕の場合です。エリクサーの寿命は、弾き手のプレイスタイルによって大幅に変わると思います。
僕と同じように、激しいビブラートを連発する人は、おそらく同じような結果となるでしょう。一方で、ビブラートが控えめな人、あるいはコードをかき鳴らすのが主体の人の場合は、もっと長い期間、快適な演奏ができるはずです。
NANOWEBとOPTIWEB、両方使って分かったこと
実は、今回の「OPTIWEB」を検証する前に、別種類のエリクサー弦である「NANOWEB」を2か月ほど、時間にして100時間ほど弾いてみました。
ここでは、2種類のエリクサー弦を試して分かったことを綴っていきます。
「NANOWEB」は、OPTIWEBの前に開発されたエリクサー弦です。OPTIWEBよりもコーティングが厚く、触り心地はなめらか、音色的にはやや大人しめの印象です。テンションがかなりキツめで、激しいチョーキングやビブラートを多用する人は苦労するかも…。
ちなみにこの2種、「プレーン弦はどちらも同じ」などという人もいますが、まったくの別物です。音色、テンション感ともに大きく異なります。
NANOWEBは毛羽立ちやすい…?
「NANOWEB」を使用していたときは、使っているうちに巻き弦が毛羽立ってくるのが少し気になりました。
「OPTIWEB」よりもコーティングが厚いため、毛羽立ちが目立ちやすいのかもしれません。
プレーン弦がピッキングで錆びる
ビブラートやチョーキングによって弦が摩耗し、そこだけ錆びるのは「NANOWEB」も同じです。ただ、「NANOWEB」を使用したときは、ピックが当たる部分にも同様のサビが発生していたのが特徴的でした。
写真を撮り忘れてしまったのですが、1~3弦のプレーン弦、ちょうどピックが当たる部分だけが少し黒ずんでいる感じで、特に1弦が酷かったのを覚えています。
この部分が錆びると、ピッキングするたびにザラッとした嫌な感触が伝わってきて、とても不快です。弦全体の見た目や音色としてはまだまだ問題ない感じでしたが、この感触に耐えられずに2か月で弦を交換した、というわけです。(2か月といっても100時間ほどは弾いた)
不思議なことに、「OPTIWEB」のほうでは、この「プレーン弦のサビ(ピックが当たる部分)」は発生しませんでした。
ただ、それが弦の種類が違うせいなのかは分かりません。「NANOWEB」のときだけ、たまたま1弦を酷使していたのかもしれませんからね。(そんなことはないと思いますが…)
ちなみに、メーカー側が考えるエリクサーの寿命は、以下のとおりです。
通常、スチール製プレーン弦(高いほうのE弦、B弦)が劣化の兆候を示した時が交換時期の目安です。
エリクサー公式サイトより引用
この「プレーン弦の劣化」というのは、僕が体験したような、度重なるピッキング等によって部分的に弦が黒ずんでしまうことをいうのかもしれません。
OPTIWEBのコーティングの薄さは寿命と無関係
「OPTIWEB」は、ノンコーティング弦に近い手触りや音色を目指すため、「コーティングを薄くした」とメーカー側が謳っています。
そのせいで「NANOWEB」よりも錆びやすくなっているのではないか、と少し気になっていましたが、今回の検証によって、そんなことはないと分かりました。
「OPTIWEBはコーティングが薄いから錆びやすいのでは…?」などと心配する必要はないでしょう。
エリクサー弦に手入れは必要か?
錆びにくい加工がなされたエリクサー弦であっても、練習後はキチッと弦を拭くべきなのか、そのまま放置しても問題ないのかなど、手入れに関する疑問を持つ人も多いはずです。
結論から言うと、エリクサーの場合は拭かなくてもあまり問題はないと感じました。
というのも、1年間の検証のなかで、前半6か月は「しっかり弦を拭く」、後半6か月は「弦を拭かない」というテストをしてみたのですが、特に変化を感じなかったからです。
ただし、ほかの金属パーツへの影響や衛生面などを考えると、やはりエリクサーとはいえ、練習後はキチッと弦を拭いたほうがよいと思います。
ちなみに、エリクサー弦で長時間練習したあと、クロスで弦をつまむようにしっかり拭くと、白い粉のようなものが付着します。(巻き弦、プレーン弦ともに)

これは、手汗が弦に吸収されず、そのまま結晶化して白い粉のようになったものと思われます。ほとんど手が触れていない部分を拭いても白い粉は出てこないので、「白い粉=手汗が結晶化したもの」と考えて間違いないでしょう。
潤滑剤の使用は「非推奨」
エリクサーの公式サイトによると、弦の滑りをよくする潤滑剤のようなものを使用することは「推奨しない」とはっきり書かれています。
エリクサーストリングスをギターに張っている時はどのように手入れをすればいいですか。
特に手入れの必要はありませんが、プレイ後に乾いた布で弦を拭いて汚れや汗を取り除けば、次回も気持ちよく使用できます。クリーナーや潤滑剤の使用はおすすめしません。
エリクサー公式サイトより引用
理由などは書いていないため、詳しいことは分かりませんが、推奨しないということは、なんらかの悪影響をおよぼす可能性がある、ということだと推測できます。
僕が「NANOWEB」を使っていた当時、その事実を知らず、スプレー式の潤滑剤を使ってマメに弦を拭いていました。もしかしたら、前述した「ピックの当たる場所だけプレーン弦が黒ずむ」という現象は、潤滑剤が悪影響を及ぼした結果、という可能性も考えられるかと思います。
ただ、まともな検証はできていないため、真実は分かりません。(一応、参考までに記しておきました)
その他、エリクサーを使って感じたこと
実は、初めてエリクサー弦を使ったとき(NANOWEBのほう)、少しだけ音量が下がったような、鳴りが控えめになったような気がして、すぐ元の弦に戻そうとしました。長年ギターを弾いている自分にとって、「7の強さで弾いたのに6の音が鳴る」は大問題だったのです。
とはいえ、1セットが高価ゆえにもったいない気がして、「とりあえず錆びるまでは使うか…」と思ったのですが、一向に錆びる気配がなく…。いつまでたっても錆びないので、「あっ、これはスゴいかも…!」と思い、結局メインの使用弦となったわけです。
音量がやや小さく感じたことについては、1か月もしないうちに慣れてしまいました。「NANOWEB」の特性で控えめな鳴りに感じたのか、「OPTIWEB」でも同じなのか、いまとなっては分かりません。
いずれにしても、いまは「ELIXIR OPTIWEB」を使用して、快適なギターライフをおくることができています。
まとめ
そんなわけで、エリクサー弦を長期間交換せずに使い続けるとどうなるのか、僕が感じたことのほぼすべてをこの記事に書いてみました。
エリクサーの「錆びない」に関しては、よほどの捻くれ者でない限り納得するはずです。弾き心地などに関しては、自分自身で確かめるしか方法はないので、気になる人は一度試してみてください。
初めてエリクサーを購入するなら、3種のうち「OPTIWEB」の一択かと思います。触り心地やテンション、音色など、一般的な弦とあまり変わらないのが「OPTIWEB」です。もし興味があれば、その後に別の種類を使ってみる、という順番がよいと思います。
ちなみに、アコースティックギター用は「OPTIWEB」という種類がなく、「80/20 BRONZE NANOWEB」というタイプが最も明るい音色で、一般的な弦に近いものとなっています。
エリクサーの何がよいかというと、弦交換という不毛な時間をギターライフから排除できる点です。もちろん、その時間は有意義な練習などに当てられるのです。
学校や仕事が忙しくて時間の余裕がない人ほど、そのありがたみを痛感すると思いますよ。
気になったといっても、「あぁ、みんながよく言うのはコレのことか…」ぐらいで、実際にはほとんど気にしていませんでしたが…。