ギターを弾く際、せっかくチューニングをしたのに、すぐにチューニングが狂ってしまう、ズレてしまう、という経験をした人は多いでしょう。
それがほんの一時的なことならよいですが、頻繁にチューニングが狂ってしまうようだと困りものです。
この記事では、チューニングがすぐに狂ってしまう理由について解説します。
チューニングがすぐに狂ってしまう理由
ギターのチューニングがすぐに狂ってしまうのには理由があります。多くの場合、以下のいずれかに該当するのではないでしょうか。
- 弦をよく伸ばしていない
- トレモロユニットに問題がある
- ネックが動いている
順番に詳しく見ていきましょう。
弦をよく伸ばしていない
チューニングがすぐに狂ってしまう原因として、最もありがちなのが「弦をよく伸ばしていない」というものです。
一般的に、エレキギターやアコースティックギターの弦は「鉄(スチール)」で作られています。鉄といえば、鉄パイプのように「頑丈」や「屈強」といったイメージを抱く人が多いでしょう。ですが、ギターの弦はとても細いため、チョーキングなどで強い力が加われば簡単に伸びてしまうのです。チューニング済みのギターの弦が伸びてしまう(=たるむ)とピッチが下がる(=チューニングが狂う)のは、たとえ初心者でも容易に想像できるでしょう。
こうした「弦の伸び」によるチューニングの狂いを回避するには、あらかじめ弦をよく伸ばしておけばよいのです。
チューニングがすぐに狂ってしまう人の多くは、この「あらかじめ弦を伸ばしておく」という作業が不十分な可能性があります。ピンと張ったギターの弦は、その時点で強く引っ張られているため、ある程度は伸びているのですが、「まだまだ伸びる」のです。
チューニングを安定させるには、先に弦を伸ばしておく必要があります。ギターの弦を新品に張り替えたら、あらかじめしっかりと弦を伸ばしておきましょう。
弦を伸ばすには、全弦にわたってひたすらチョーキングをしたり、つまんで持ち上げるようにします。いずれにしても、ローポジションからハイポジション、その先のブリッジ付近に至るまで、満遍なく伸ばすのがポイントです。張られた弦の中央付近を伸ばすだけでは不十分です。
この「弦を伸ばす」という作業の際、指が痛くて辛いと感じる人もいるかもしれません。そんな場合には、下のような専用の道具を使ってみるのもよいでしょう。
こうした道具を使用すれば、指に負担をかけることなく、弦をしっかりと伸ばすことができるはずです。
弦を伸ばしすぎるとよくない…?
「弦を伸ばしすぎると弦が死んでしまうのでよくない」などという主張を見かけることもあります。
僕自身も初心者の頃、そうした主張を教則本で目にし、長い間その言いつけを守っていました。しかし、ある日ふと疑問に思い、念入りに弦を伸ばしてみたところ、何の問題もないことに気づいたのです。むしろ、明らかにチューニングの安定度が増し、もっと早くこうするべきだったと後悔しました。それ以来、新品の弦を張ったあとは、念入りに弦を伸ばすようにしています。
すぐにチューニングが狂ってしまう人は、「伸ばしすぎると弦が死ぬ」などという理屈はとりあえず無視して、しっかりと弦を伸ばしてみてください。その結果、何か困ることがあるのかどうか、自分自身で確認するべきです。
おそらく、僕と同じ結論になるのではないでしょうか。
トレモロユニットに問題がある
ストラトキャスターのようにアーミングが可能なギターの場合、ブリッジ部分に組み込まれた「トレモロユニット」に問題があるせいでチューニングが狂ってしまうことがあります。
アーミングが可能なギターは、ブリッジが完全には固定されていません。完全に固定してしまうとアーミングができないので、力を加えれば動くような構造になっているのです。
とはいえ、あっさりとブリッジが動いてしまうようでは楽器として成立しません。そのため、半固定状態のようになっているわけです。
もう少し具体的にいうと、ギターに張られた弦の張力で浮き上がろうとするブリッジを、ボディ裏にセットしたスプリングの張力で引っ張り返す、という仕組みでバランスをとっています。
このバランスが崩れるとチューニングが狂ってしまう、というわけです。
バランスが崩れてしまう原因はいくつかありますが、比較的よくあるのが「トレモロユニットの精度自体に問題がある」というパターンです。
トレモロユニットの精度に問題がある場合、アーミングをしてブリッジが動いたあと、そのブリッジがきちんと元の位置に戻らないことがあります。すると、全体的にピッチが少し下がったままになったり、上がったままになったりして、結果的にチューニングが狂った状態になってしまうのです。
アームを使った直後、すべての弦のチューニングが狂うようなら、トレモロユニットの問題を疑ってみましょう。この場合、自分でどうにかするのは難しいため、リペアショップに相談することをおすすめします。
ネックが動いている
ネックが動いてしまうせいでチューニングが狂うこともあります。正確にいうと、「ネックの反り具合が変化したせいでチューニングが狂う」です。
ギターのネックは湿度の影響を大きく受けます。乾燥した場所に置いておくと、ネックは縮んで順反りになります。逆に、湿度の高い環境に置いておくと、ネックは膨張して逆反りになります。
ネックの反り具合が変化すると、それにともないチューニングも狂います。前日に比べて全弦のピッチがやや下がっている、または上がっている、といった場合、ネックの反り具合が変化した可能性が高い、と考えてよいでしょう。
ギターのネックの状態がたったの一日で変わるのか、と思う人もいるかもしれませんが、ネックは一晩もあれば充分に動きます。日本は湿度の変化が激しい国です。昼間は湿度30%以下だったのが、夜は湿度70%以上などということがザラにあります。そんな環境のなか、ギターはどうしても影響を受けてしまうわけです。
加湿器などを利用して、湿度をなるべく一定に保つことはできますが、それでも現実的に考えると限界があるでしょう。ギターのネックが湿度変化の影響で多少動いてしまうのは、仕方のないことなのです。それゆえ、ネックの状態変化にともなうチューニングの狂いも仕方ないもの、と割りきるべきでしょう。
おわりに
チューニングがすぐに狂ってしまう理由について解説しました。
ギターという楽器の構造や一般的な生活環境などを考えると、チューニングが狂うという現象自体は避けられません。ですが、演奏中にすぐチューニングが狂ってしまうようなら、それは何か問題があるということです。
まずは「しっかりと弦を伸ばす」を実践して、様子を見てみましょう。