楽器屋にズラリと並んだエレキギター。
これからギターを始める初心者にとって、そこから1本選んで買うのは難しいことかもしれません。
初心者の場合、「なんとなく、このギターがカッコいいと思ったから!」という直感的な選び方でよいのですが、少しの予備知識があれば、より自分に合ったエレキギターを選ぶことができるはずです。
この記事では、初めてエレキギターを買う人に向けて、エレキギターの種類や仕様、選ぶ際の注意点などについて解説します。
エレキギターの大まかな種類
まずは、エレキギターの大まかな種類をザッと把握することから始めましょう。
エレキギターは、その見た目や構造的な特徴から、いくつかの種類に分類することができます。
種類の異なるギターは、見た目の印象はもちろん、サウンドの傾向なども少し異なります。
テレキャスター
平面的で無骨なボディ、ブリッジに取り付けられた金属プレートが印象的な「テレキャスター」。
サウンド的には、タイトでやや金属的な、きらびやかな響きが特徴です。
比較的オールマイティに使えるギターですが、コードをジャカジャカとかき鳴らすことが多いギタリストから特に好まれている印象です。
1950年頃、フェンダー社によって世に送り出され、一世を風靡したのが「テレキャスター」というモデルです。アコースティックギターの延長のようなエレキギターが主流だった当時、それまでとはまったく異なる「ソリッドギター(ボディに空洞がないギター)」という独自のデザインで、エレキギターの歴史に革命をもたらしました。
ストラトキャスター
テレキャスターを改良し、より優れた演奏性を追求して生まれたのが「ストラトキャスター」です。
テレキャスターとは少し違う、曲線的なボディシェイプが特徴的で、演奏のしやすさや構えたときの安定性を考慮した形になっています。
サウンド的には、タイトで引き締まった心地よい響きが特徴です。
また、「アーム」を使ったプレイが可能なのも、ストラトキャスターの大きな特徴のひとつと言えるでしょう。
ストラトキャスターは、どんなジャンルにもマッチする万能型のエレキギターで、「エレキギターの基本形」といっても過言ではないでしょう。ジャンルを問わず、多くのギタリストに愛用されています。
レスポール
ひょうたんのような見た目が印象的な「レスポール」。
テレキャスターやストラトキャスターとは構造が大きく異なり、それがそのままレスポールの個性となっています。
サウンド的には、パワフルで太い音色が特徴的です。
比較的オールマイティに使えるギターですが、力強いサウンドにこだわるロック系ギタリストから特に好まれている印象です。
フルアコースティック
ボディの内側がすべて空洞になっているタイプのエレキギターを、「フルアコースティックギター」といいます。
空洞がないエレキギター(ソリッドギター)と比べると、ボディのサイズが大きめなのが特徴です。サウンド的には甘くふくよかで、空気感のある独自のトーンが特徴的。ジャズやブルースのような渋めのジャンルをプレイするギタリストに人気です。
フルアコースティックはその構造上、ハウリング(※下記参照)を起こしやすいのが難点です。そのため、大音量を必要とするロック系のジャンルには不向きとされていますが、それでも一部のロック系ギタリストには支持されているのが現状です。
セミアコースティック
ボディの内側が「部分的」に空洞になっているタイプのエレキギターを、「セミアコースティックギター」といいます。
フルアコースティックギターの弱点だった「ハウリングを起こしやすい」という問題を解消するため、空洞の範囲を狭めた設計になっているのが特徴です。
ロックのように大音量を必要とするジャンルでも比較的扱いやすくなっていますが、フルアコースティックほどの空気感は得られないのが弱点です。
その他タイプ
エレキギターには、ほかにもさまざまな種類が存在します。
ここでは、その一部を紹介しましょう。
SG
フライングV
ジャガー
ジャズマスター
ムスタング
エレキギターの仕様
エレキギターには、大まかな種類の違いに加えて、細かい仕様の違いなども存在します。
ここでは、そんな「仕様」に関してのポイントをいくつか紹介しておきましょう。
ピックアップ
エレキギターのボディには、弦の振動を音として拾う「マイクのようなもの」が搭載されています。このパーツを「ピックアップ」といいます。
ピックアップの種類
ピックアップには大きく分けて、「シングルコイル」と「ハムバッカー(ハムバッキング)」の2タイプが存在します。
シングルコイル
見た目の印象は細長い棒状で、サウンド的には「ジャキジャキッ」とした、鮮やかで歯切れのよい音が特徴的。
出力はやや控えめのことが多く、ノイズが発生しやすいという弱点もあります。しかしながら、シングルコイルならではの歯切れよいサウンドは、替えのきかない魅力といえるでしょう。
ハムバッカー
シングルコイルを2つ並べたような見た目で、サウンド的にはやや丸みを帯びたような、太い音が特徴的。
シングルコイルよりもノイズが発生しづらく、出力も高めのものが多くなっています。
「パッシブ」と「アクティブ」
シングルコイルとハムバッカーの違いに加えて、ピックアップには電池を必要とするものと、そうでないものとが存在します。
電池を必要としないものを「パッシブピックアップ」といいます。多くのエレキギターは、このパッシブピックアップを搭載している、と思えばよいでしょう。
一方、電池を必要とするものを「アクティブピックアップ」といいます。アクティブピックアップは、拾った音(入力信号)を電池の力で増幅して出力する仕組みです。パッシブピックアップよりもノイズが発生しづらいという特性があります。
ピックアップの場所
エレキギターにはピックアップが2~3個搭載されていることが多く、どのピックアップで音を拾うか(または同時に拾うか)を自由に選択できるようになっています。
ブリッジ寄り(リア)に搭載されたピックアップを使用した場合、やや硬質なサウンドになります。ロックを始めとして、多くのジャンルでリアのサウンドが基本になる、と思えばよいでしょう。
一方、ネック寄り(フロント)に搭載されたピックアップを使用した場合、丸みを帯びたサウンドになります。ジャズのようなジャンルでは、フロントの音が基本となります。
スケール(ネックの長さ)
ギターに張られた弦の始点(ブリッジサドル)から終点(ナット)までの長さを、「スケール」といいます。
スケールの長さはギターによって異なりますが、大まかに以下の3タイプに分けることができます。
- ロングスケール(約648mm)
- ミディアムスケール(約628mm)
- ショートスケール(約610mm)
ロングスケール
スケールの長さが648ミリ前後のものを、「ロングスケール」といいます。
フェンダーのテレキャスターやストラトキャスターを始めとして、多くのギターがこのロングスケールを採用しています。
ミディアムスケール
ギブソン社のレスポールやSGなどは、基本的に「ミディアムスケール(約628mm)」が採用されています。
ロングスケールよりも2センチほど短いため、フレットとフレットのあいだ(左手で弦を押さえる場所)が少し狭くなります。そのため、コードを押さえたりソロを弾いたりするときの感覚も少し変わってきます。
ショートスケール
フェンダーのジャガーやムスタングなど、一部のギターはミディアムスケールよりもさらに短い「ショートスケール(約610mm)」を採用しています。
ロングスケールと比べると4センチほど短いため、フレットの間隔はだいぶ狭くなります。手の小さな人にとっては押さえやすいと感じるかもしれません。
アーム
エレキギターには、アーム(細長い棒のようなパーツ)のついたものと、そうでないものがあります。
アーム付きのエレキギターは、そのアームバーを押し込んだり引き上げたりすることで、鳴らしている音のピッチ(音の高さ)を変化させることができます。
より多彩な表現が可能になるアームですが、アーム付きのギターには以下のようなデメリットもあります。
- アーミングによってチューニングが狂ってしまう可能性がある(※1)
- 演奏中に弦が1本でも切れると、すべての弦のチューニングが狂ってしまう(※2)
ギターに張った弦の音高(ピッチ)を規定の高さに合わせることを「チューニング」といいます。
初心者は深く考えなくてもOK!
アームに対する考えは、プロギタリストでもさまざまです。頻繁にアームを使う人もいれば、たまにしか使わない人、まったく使わない人もいます。
ギターを弾いたことのない人が、自分にアームが必要かどうかを考えるのは難しいでしょう。とりあえず、「アームというものがあるんだな」と理解したら、あとはあまり気にしなくてもよいと思います。
多弦ギター
「ギターの弦は6本」というのが標準的な仕様ですが、近年では7本の弦を張った「7弦ギター」、8本の弦を張った「8弦ギター」など、「多弦ギター」を見かけることも増えました。
多弦ギターは6弦ギターよりも低い音を奏でることができます。そのため、超重低音を必要とするヘヴィなロックなど、一部ジャンルのギタリストに支持されている傾向があります。
エレキギターを選ぶ際の注意
続いて、エレキギターを選ぶ際の注意点などを簡単に確認しておきましょう。
音の違いを気にしすぎない
これからギターを始める初心者は、音の違いについて考えすぎないようにしましょう。
まだ音の違いがよく分からないのに、音のことで悩む必要はありません。音を気にしてギターを選ぶのは、経験を積んでから、自身で音を判断できるようになってからでよいのです。
最初は音のことを気にしすぎず、見た目や触った感覚などの分かりやすい点を基準にしてギターを選ぶことをおすすめします。
安すぎるギターは要注意
通販で1万円などの「安すぎるギター」には要注意です。
安すぎるギターは作りが粗く、楽器としての最低ラインに達していないことが多いのです。
あまりに安いギターを安易に買うことはおすすめしません。
高いギターを無闇に買わない
数十万円もするような高いギターを、「なんとなく」で買うことはおすすめしません。(お金持ちは例外)
まだギターが弾けない、音のことも分からない、ギターに対する好みやプレイスタイルも定まっていない、そんな段階で高いギターを買っても、のちに「失敗したな…」となる可能性が高いのです。
そもそも、挫折してギターをやめてしまう可能性だって充分にあります。それらを総合的に考えると、最初の段階で数十万円の博打をするべきではないのです。
通販では色に注意
通販でギターを買う場合は「色」に注意しましょう。いざ実物が届くと、通販サイトの写真とは色味がだいぶ違った、なんてことも充分ありえます。
黒や白など、単調な色の場合は写真で見たままの印象のことが多いですが、ターコイズブルーのような「曖昧な色味」の場合、写真と実物の印象が異なる場合が多いです。
楽器屋で実物を確認できればよいですが、そうもいかない場合、Googleの画像検索を利用してみましょう。加工などがされていなそうな写真、特に「一般の個人が撮影したような写真」を複数参照すれば、少しは実際の色味がイメージできるかもしれません。
おわりに
エレキギターの種類や仕様、選ぶ際の注意点などについて解説しました。
最初にも述べたように、初心者の場合はあまり難しく考えず、直感をベースにして選んでよいと思います。ここで紹介した知識を「少しだけ」参考にして、お気に入りの1本を探してみてください。