練習スタジオやライブハウスに行くと、ほぼ必ず置いてあるのがローランドの「ジャズコーラス」と呼ばれるアンプ、「JC-120」です。
通称「ジャズコ」と呼ばれるこのアンプは、マーシャルアンプと並んで「定番中の定番」とされていますが、自分の思うような音が出せずに苦労している人も多いのではないでしょうか。
この記事では、「ジャズコーラスでの音作りにおいて見落としがちなポイント」について解説します。
ジャズコーラスのセッティングの基本
念のため、ジャズコーラス(JC-120)におけるセッティングの基本を簡単に確認しておきましょう。
アンプの前面には、「HIGH」と「LOW」の2つのインプットジャックがあります。この2つの違いは、出力される音の大きさです。「HIGH」のほうに接続するのが普通、と覚えておけばよいでしょう。
「TREBLE」「MIDDLE」「BASS」と書かれたイコライザー(EQ)のつまみは、「5」がフラットな状態(平坦な状態)とされています。ひとまず、すべて「5」にセットし、強調したい帯域はつまみを右へ、カットしたい帯域はつまみを左へ回します。
インプットジャックのそばにある「BRI(ブライト)」と書かれた小さなスイッチは、ONにすることで音質が明るくなります。OFFの状態で物足りないと感じたら、ONを試してみましょう。また、このスイッチはONかOFFかがパッと見ただけでは分かりづらいため、普段から確認する習慣をつけておくとよいでしょう。
ジャズコの扱いは難しい…?
さて、ここから本題に入りましょう。
ジャズコーラスで納得のいく音がなかなか出せず、アンプやエフェクターのつまみをいつまでもいじってしまうのは、かつての僕だけではないでしょう。
特に、こんな経験はないでしょうか?
- しっかりセッティングしたはずなのに、いざバンドの皆と練習を始めたら違う音に聞こえる
- 前回のスタジオ練習時と同じセッティングにしているはずなのに、まったく違う音に聞こえる
これにはもちろん、理由があります。
アンプと耳の位置関係で音は激変する
音は、その発生源(スピーカーなど)と耳の位置関係によって聞こえ方が大きく変化する、という特性をもっています。
ジャズコーラスのような「高さが低めのアンプ」を使う場合、自分の立ち位置(アンプとの距離)によって、アンプ内のスピーカーと耳とを結ぶ「角度」が大きく変化します。その角度の変化によって、音の聞こえ方が大きく変わってしまうのです。
アンプから出ている音自体は同じでも、自分の立ち位置が変わり、アンプと耳の位置関係が変わることで、音が変わったように聞こえてしまうわけです。
アンプと耳の位置関係による聞こえ方の違い
もう少し具体的に説明しましょう。
たとえば、ジャズコーラスのすぐ手前に自分がいるとします。そこで立ってギターを弾くのと、しゃがんでギターを弾くのとでは、音がまるで違って聞こえるはずです。
- 立った状態……音はこもって聞こえる
- しゃがんだ状態……高域が鋭く聞こえる
高域は低域と違い、スピーカーからまっすぐに放たれる特性をもっています。アンプ前でしゃがんている状態だと、高域の音波はほぼダイレクトに耳に届きますが、アンプ前で立っている状態では角度が90度に近くなるため、耳に届きづらくなるのです。
ジャズコで音作りする際の注意ポイント
ジャズコーラスで音作りをする際は、上で述べたような特性を踏まえつつ、以下のような点に注意しましょう。
客席に届く音は「アンプ前でしゃがんで聞く音」
ライブハウスなどのステージで演奏するときは、アンプの前にマイクを立て、マイクで拾った音をPAスピーカーから出力するのが一般的です。
つまり、客席に届くギターの音は、「アンプの前でしゃがんで聞いたときの音」なのです。音作りをする際は、このことを頭に入れておきましょう。
ジャズコのそばで立って音作りしない
ジャズコーラスのすぐそばで立って音作りをすると、少しこもった音、丸い音に聞こえるため、ついつい高域を上げてしまいがちです。しかし、そうすると自分が思っているより遥かに高域のきつい音が他人に届くことになってしまいます。ジャズコーラスのすぐそばで立ったまま音を作るのは、なるべく避けたほうがよいでしょう。
他人に届く音と自分に聞こえる音の差をなくすには?
ライブなどでお客さんに演奏を披露する場合はもちろんですが、スタジオで一緒に練習するバンドメンバーにも、痛々しい音など聞かせたくないものです。
ですが、その点を意識して音作りしたとしても、今度は自分の耳に入る音が妙に丸い音になったりして、それはそれで自分が演奏を楽しめなくなりがちです。
では、他人に届く音と自分に聞こえる音のギャップを減らすにはどうしたらよいのでしょうか?対処法をいくつか見ていきましょう。
対処法1:ジャズコを少し高いところに置く
いちばん確実なのが、「ジャズコーラスを少し高いところに置く」という方法です。スタジオやライブハウスによっては、最初からこの状態にセッティングされていることもあるでしょう。
イスの上などにのせるだけで効果は抜群ですが、ジャズコーラスの定番サイズであるJC-120は、「30kg」ほどの重さがあります。自分の体はもちろん、アンプ本体を破損などしないよう充分注意してください。
対処法2:アンプから距離をとる
アンプから少し距離をとれば、耳との角度が緩やかになるため、音の聞こえ方が安定しやすくなります。
せまいスタジオの中では難しいですが、ある程度の広さをもったスタジオで演奏する場合、一定の効果が見込めるでしょう。
対処法3:イスに座る
イスに座ると耳の高さが下がるため、他人が聞く音とのギャップを埋めることができます。
ただし、ライブの際に立って演奏するつもりなら、普段から立って演奏することに慣れておくべきなので、できれば別の方法で対処したいところです。
おわりに
「ジャズコーラスでの音作りにおいて見落としがちなポイント」について解説しました。
「音作り」というと、アンプのつまみの位置やエフェクターのセッティング、といった点にばかり気をとられてしまいがちですが、アンプと耳との位置関係によって音の聞こえ方が大きく変わる、という点も忘れてはいけないポイントです。
ジャズコーラスでの音作りに苦労していた人は、それらを踏まえたうえで音作りと向き合ってみてください。