アンプシミュレーターでいい加減な音作りをしないために押さえておきたいポイント

DTM / DAW

さまざまなギターアンプの音をリアルに再現し、自宅でも気軽にレコーディングできるのがアンプシミュレーターの強み。ただ、いろいろなことが出来すぎてしまうがゆえに、音作りの迷路から抜け出せなくなったり、いい加減なセッティングになってしまうこともありがちです。そこで今回は、アンプシミュレーターで上手に音を作るためのポイントをいくつか紹介しようと思います。

この記事ではAmpliTube4を例に解説しますが、ほかのアンプシミュレーターと共通する部分がほとんどだと思うので、別のものを使用している人もぜひ参考にしてください。

「改造」はナシにすると音作りしやすい

アンプシミュレーターのなかには、実際には手間の掛かることや現実的ではないことが簡単に実行できてしまうものがあります。

たとえば、アンプの中にある真空管を別の種類の真空管に交換したり、キャビネット内のスピーカーユニットをほかのものに交換するなど、ややハードルの高いアンプ改造のようなことが簡単にできてしまいます。

AmpliTube4ではキャビネット内のスピーカーを交換できる

また、フェンダーのコンボアンプの音をマーシャルキャビネットから鳴らすといった、あまり現実的ではないセッティングすらも簡単に試すことが可能です。

これらはアンプシミュレーターならではのメリットといえますが、アンプに対する理解がそこまでではない初心者~中級者にとっては、音作りの悩みを複雑化してしまう要因となります。こうしたアンプ改造的な機能を「無し」として音作りを進めれば、音作りのゴールが見えやすくなるはずです。

(知識の豊富な上級者がこれらの機能を積極的に活用するのは、もちろんアリだと思います。)

キャビネットを替えれば音は別物になる

アンプの種類を変更すれば音のキャラクターは大きく変わりますが、キャビネットの変更も音に大きな変化をもたらします。

多くのアンプシミュレーターでは、いずれかのアンプを選択すると、それにマッチするキャビネットが自動的に選択されるようになっています。デフォルトとして選択されるキャビネットをなんとなく使っていた人は、試しに変更してみることで理想の音により近づくことができるかもしれません。

同メーカーのキャビネットを試す

キャビネットの選択肢が多すぎて迷ってしまう人は、同じメーカーのキャビネットに絞って試してみることをおすすめします。

たとえばAmpliTube4の場合、マーシャルのJCM800モデルをプリアンプとして選択すると、それに対応するキャビネットが自動的に選ばれますが、そのほかにもJCM900用のキャビネット、ビンテージマーシャル用のキャビネットなど、数種類のマーシャルキャビネットが用意されています。

ビンテージマーシャル用のキャビネットをJCM800に合わせても◎

同じメーカー内で別タイプのキャビネットに変更するだけでも音の印象は大きく変わるので、デフォルトのキャビネットよりも好みのものがないか、ひと通り試してみるといいでしょう。

マイクのポジションで音は激変する

アンプシミュレーターの多くは、アンプ前に設置するマイクのポジションを自由に変更することができます。このマイクのポジションによっても音は驚くほど変化するので、ワンランク上の音作りのためには是非とも理解しておきたいポイントです。

アンプとマイクの距離

アンプのすぐ手前にマイクを置く (オンマイク) と音圧感のある鮮明な音に、アンプからマイクを遠ざける (オフマイク) と部屋の残響や空気感を含んだ音になります。

一般的なギターのレコーディングではオンマイクを基本とすることが多いため、シミュレーターでもオンマイクの音を基準として音作りを考えるのがおすすめです。

定番マイクは「SM57」

実際のレコーディング現場で最もよく使われるのが、楽器用ダイナミックマイクの定番であるSHUREのSM57。ほとんどのアンプシミュレーターは何種類かのマイクが選べるようになっていますが、このSM57が基本中の基本、と考えると音作りもスムーズに進められるでしょう

SM57のモデリングは必ず用意されているはず

マイクの位置と音の特徴

スピーカーの中央 (センターキャップ) に近づくほど高域の強調された音になり、端のほう (エッジ) に近づくほど低域の強調された音になります。どのあたりを狙うのが普通、といったことはないので、音の変化をよく聴きながら好みのポジションを探してみましょう。

センターキャップ付近を狙ったマイキング。高域が強調された音になる。
エッジ部分を狙ったマイキング。低域が強調される。

隣り合うスピーカーの影響も受ける

アンプシミュレーターにもよりますがAmpliTube4の場合、狙っているスピーカーだけでなく、ほかのスピーカーから出る音も拾う点に注意しましょう。

たとえば上の写真のような位置にマイクを立てた場合、右のスピーカーから出る音もしっかりと拾うことになり、サウンドの印象も少し変わってきます。シンプルに音作りを進めたいなら、まわりのスピーカーユニットの影響を受けにくい場所を狙ってマイキングするといいでしょう。

複数のマイクをむやみに使わない

アンプシミュレーターの多くは、2本以上のマイクを使用して、それらの音を自由に混ぜ合わせることが可能になっています。

これは実際のレコーディングでも用いられる手法ですが、なんとなくの理由で2本以上のマイクを使用すると曖昧な音になりやすいので注意が必要です。エンジニアの中には1本のマイクしか使わない人も多いため、無理に複数のマイクを混ぜ合わせる必要はありません。特に理由がない場合は、1本のマイクで音作りを完結させてしまうといいでしょう。

必要ないマイクはOFFにしてしまえばOK

ピッキングに問題があると音は痩せてしまう

シミュレーター内のセッティングも大事ですが、ピッキングによる音の影響も忘れてはいけません。たとえ完璧なセッティングだったとしても、ピッキングに問題があると抜けの悪い痩せた音になったり、ガツガツしたうるさい音になってしまうのです。なかなか納得のいく音にならない場合、音作りとともにピッキングフォームの見直しも視野に入れてみるといいかもしれません。

おわりに・・・

アンプシミュレーターはいろいろなことができる反面、望みどおりの音をサッと出すのが難しいともいえます。ギタリストがアンプのつまみをいじる要素に加えて、レコーディングエンジニア的なノウハウも必要ですからね・・・。

突き詰めればキリがありませんが、うまく活用して納得のギターサウンドを目指してみましょう!