正しいピッキング、とか言ってるギター講師にだまされるな!

ギター

皆さん、これが正しいピッキングですよ~!

そんな主張をする人をリアルでもネットでもたまに見かけます。

しかし、なぜそのピッキングが正しいと言いきれるのでしょうか?

自分で正しいと思っているだけならまだいいのですが、他人に押しつけてしまうのは考えものです。

その押し付けが他人の上達の妨げになったり、個性を奪うことにも繋がるのです。

僕自身も、ある人が主張した「正しいピッキング」を信じてしまったせいで、とても遠回りをしてしまいました。そんな経験を絡めつつ、「正しいピッキングなど存在しない」という自分の考えを述べてみたいと思います。

正しいピッキングなど存在しない!

はっきりと断言しますが、この世の中に「正しいピッキング」など存在しません。

正しいと主張する人の根拠は「自分の場合はそれで上手くいった」という自分目線のものでしかないはずです。

「理想」は人それぞれ

自分にとって一番よいと思えるもの、「自分なりの答え」は必ずあると思います。

しかし、それが他人にも同じようにあてはまるとは限りません。なぜなら、自分と他人とでは、音楽や表現に対する「理想」がまったく違うからです。

難しいフレーズや速いフレーズが弾きたい人には、ある程度「合理的なピッキング」が必要となります。ただ、合理的なピッキングは1つではないし、とにかくカッコよく見せたいと思っている人にとっては「非合理的なピッキング」が正解となることもあるでしょう。

そんな「各自が描く理想」を無視し、自分の答えを勝手に押し付けるのは、とても浅はかなことです。ましてそれがギター講師のやっていることだとしたら、なおさらです。

正反対のことを言う2人のギター講師

昔の話ですが、ある有名な音楽学校の体験レッスンを受けたことがあります。そのとき、ギター講師に「キミのピッキングは間違っている」と指摘をされました。

そのギター講師の主張は次のとおりです。

  • ボディに手首や指をつけない (宙に浮かせたままにする)
  • ピッキングは腕 (手首) を回すように、ピックが弧を描くようにする

一方、別の音楽学校の講師がピッキングについて解説する動画を見たことがあるのですが、次のように主張していました。

  • 安定させるため、手首や指をボディにつける
  • ピックの軌道が弧を描くと弦に引っ掛かるのでNG

・・そうです。この2人は、まったく正反対のことを主張しているわけです。笑

優れた人は自分のピッキングを押しつけたりしない

この2人のうち、どちらが正しいなどと言うつもりはありません。強いて言うなら、どちらも間違っているのです。

自分以外の「誰か」にとって、どんなピッキングがベストなのか、それは当の本人にしか分からないことであり、他人が勝手に決められるものではありません。

ギターの基礎ともいえるピッキングがどれだけ奥深くて、どれだけ難しく、どれだけ繊細なのか、それを熟知している人は、他人のピッキングを無理やり修正しようとはしません。

それぞれの理想や妥協が絡むと、ピッキングはもっと複雑になります。自分にとっての正解をいきなり他人に押しつけるなど愚行でしかないのです。

僕はその後、別の音楽学校で数年間ギターを学びましたが、ピッキングに関して指摘されることなど一度もありませんでした。

一流ギタリストのピッキングも千差万別

もし「正しいピッキング」が存在するというなら、なぜ世界トップクラスのギタリストたちのピッキングは皆違うのでしょうか?

例えば、ポール・ギルバートとイングヴェイ・マルムスティーンのピッキングに注目してみてください。

なぜポールとイングヴェイのピッキングは違うのか

彼らはピックの持ち方も違うし、ボディに対する右手の添え方も違う、手首の位置も違うし、弦を通過するピックの軌道も違う、腕や手首の動かし方も違うし、もう何もかもが違うといってもいいくらい、たくさんの「違い」があります。

2人のピッキングがなぜ違うかといったら答えは簡単です。彼らにはそれぞれ別の理想があり、別の理想を追い求めたから、その結果として弾き方が違うのです。

言うまでもなく、ポールとイングヴェイのテクニックは世界最高レベルで、多くの人たちが彼らの音楽に魅了されたはずです。この2人のうち、どちらが正しいピッキングで、どちらが悪いピッキングか、なんてあまりに馬鹿げているでしょう。

正しいピッキングなど存在しない、という紛れもない事実を、彼らのような偉大なギタリストたちがとっくに証明してくれているのです。

自分のピッキングは自分で見つけよう!

他人が主張する「正しいピッキング」なるものを、たやすく信じてはいけません。正しいピッキングと主張している時点で、その人はピッキングの奥深さに気づいてすらいないのです。

思考の浅い人に技術的なことを教わってしまうと、自分の可能性が損なわれるリスクがあります。自分にとっての「ベストなピッキング」は、自分自身で見つけましょう。

ここからは、自分のピッキングを見つけるためのヒントに繋がることを少し解説しようと思います。

ピッキングによって変わるものとは?

ピッキングが変わることで多くのことが変化するのは事実です。

たとえば、ピッキングの仕方によって音の響きやニュアンスは大きく変わります。また、ピッキングを変えることで上手く弾けなかったフレーズが突然弾けるようになったり、弾けていたものが弾けなくなったり、技術面にも大きな影響があります。

見栄えにも影響がある

忘れがちですが、ピッキングはギタリストの見栄えにも影響を及ぼします。

ピッキングのフォームによっては右肘が大きく曲がったり、右肩が前にせり出したりして、それによって体全体の姿勢も変わります。姿勢が変われば見た目の印象、ステージ上での見栄えも大きく変わるのです。

見栄えなんて・・と否定する人もいるかもしれませんが、カッコよくギターを弾きたいと考えるロック志向のギタリストにとっては、とても大事な要素のはずです。

自分の理想を自分で理解する

自分にとってのベストなピッキングを見つけるためには、まず自分の理想を自分自身でしっかりと理解する必要があります。

同時に「妥協」についても考えておくと、理想がより鮮明になると思います。

  • どんな音を出したいか、どの程度の音なら妥協できるか
  • どんなフレーズを弾きたいか、どんなフレーズなら弾く必要がないか
  • どんなふうに見られたいか、あるいはどうでもいいか

こういった理想や妥協を明確にすることで、その条件に見合ったピッキングが少しずつ見えてくるはずです。

もちろん、こまかい理想や妥協のラインは人それぞれまったく違うでしょう。つまり、人によって正解はバラバラです。

だからこそ、他人が正解を教えることなどできないのです。

おわりに

僕自身、「これが正しいピッキングフォーム」と主張する人を信じてしまったせいで、とても遠回りをしてしまいました。

ピッキングとはただ弦をはじくだけのことですが、理想や妥協が絡むと非常に複雑です。そのことをよく理解している人は、他人に自分のピッキングを押しつけようとはしないのです。自分の見つけた正解を「正しいピッキング」と勘違いした挙げ句、それを他人に押しつけてしまうギター講師なんてもってのほかです。

世界には優れたギタリストがたくさんいます。そんな人たちを参考にしながら、自分に合うピッキングを自分で見つけましょう!